こんな悩みを解決できる記事を用意しました!
記事前半では適格請求書発行事業者の義務について、後半では具体的な記載内容などを解説するので、ぜひ参考にしてくださいね!
目次
適格請求書発行事業者になるとどうなるの?
課税事業者は税務署へ登録の申請をすることでインボイス制度の適格請求書発行事業者になれます。
適格請求書発行事業者になると以下の義務が生じます。
①適格請求書を交付する義務
②適格返還請求書を交付する義務
③修正した適格請求書を交付する義務
④写しを保存する義務
順番に説明していきますね。
適格請求書の交付
インボイス制度では、消費税の仕入税額控除をするためには、帳簿と適格請求書の保存が必要になります。
そのため、売り手である適格請求書発行事業者は、買い手から適格請求書の発行を求められた場合、適格請求書を交付する義務を負っています。
適格返還請求書の交付
適格返還請求書は、値引きや返品を実施した時に発行する請求書です。
値引きや返品が生じた場合には、適格請求書発行事業者は交付する義務があります。
修正した適格請求書の交付
すでに発行した、適格請求書や適格返還請求書に誤りがあった場合に、売り手側(適格請求書発行事業者)は、修正した適格請求書を交付する義務があります。
写しの保存
自身が発行した適格請求書、適格返還請求書などについては、写しを保存しておく義務があります。
適格請求書ってどういうもの?
適格請求書の様式は、法令または通達等で定められていません。
なので、必要な事項が記載されていれば、名称はなんでもよく、手書きでも大丈夫です。
必要な記載事項は、下記のようになります。
①適格請求書発行事業者の氏名または名称および登録番号
②取引年月日
③取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
④税率ごとに区分して合計した税抜きまたは税込み対価の額および適用税率
⑤税率ごとに区分した消費税額等
⑥書類の交付を受ける事業者の氏名または名称
小売業や飲食店業などの業者には、記載事項を一部省略した適格簡易請求書の発行も認められています。
これらの詳細や具体的な記載例を知りたい方は、こちらで解説していますので参考にしてください。
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適格返還請求書の記載事項は?
返品や値引きを実施した際に、発行するのが適格返還請求書です。
具体的には、販売奨励金などを売り手が買い手に支払う場合に、発行するイメージだとわかりやすいかもしれません。
この場合の記載事項は以下になります。
①適格請求書発行事業者の氏名または名称および登録番号
②対価の返還等(返品・値引き)を行った年月日
③対価の返還等(返品・値引き)の基となった取引年月日
④対価の返還等(返品・値引き)の取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
⑤税率ごとに区分して合計した対価の返還等(返品・値引き)の金額(税抜きまたは税込み)
⑥対価の返還等(返品・値引き)の金額に係る消費税額等または適用税率
③については、返品・値引きの処理を合理的な方法で継続的に実施していれば、実際の取引日ではなく、「前月末日」や「最終販売年月日」を取引年月日とすることもできます。
それ以外にも、「××月分」など課税期間の範囲内で一定の期間で記載する方法も認められます。
前月の売上値引きを当月の請求書から差し引いている場合どうすればいい?
前月に販売したものを当月の請求書から値引きするような処理も多いと思います。
このような場合、適格請求書と適格返還請求書を発行する義務が生じます。
ただ、適格請求書と適格返還請求書でそれぞれに必要な記載事項を記載すれば、1枚にまとめる処理も認められます。
対価の額や消費税及び適用税率の具体的な記載例はこんな感じです。
(取引年月日や取引内容などの記載は省略していますのでご注意ください。)
1枚の請求書で別々に記載する場合
請求書 | |
請求額 | |
合計 | 87,400円(消費税7,400円) |
10%対象 | 55,000円(消費税5,000円) |
8%対象 | 32,400円(消費税2,400円) |
値引き額 | |
合計 | 19,640円(消費税1,640円) |
10%対象 | 11,000円(消費税1,000円) |
8%対象 | 8,640円(消費税640円) |
請求金額 | 67,760円 |
1枚の請求書で合算して記載する場合
取引先ごとの継続適用を条件として、当月の請求額から値引き額を控除した額とその額に基づいて計算した消費税額等を税率ごとに請求書へ記載する方法も認められます。
請求書 | |
請求額 | |
合計 | 87,400円 |
値引き額 | |
合計 | 19,640円 |
請求金額 | 67,760円 |
10%対象 | 44,000円(消費税4,000円) |
8%対象 | 23,760円(消費税1,760円) |
適格請求書を修正するにはどうすればいいの?
適格請求書や適格返還請求書を発行した後に、内容に誤りがあることに気づくことがありますよね。
そういった場合、適格請求書発行事業者は修正した適格請求書を発行する義務があります。
そんな場合の修正方法を紹介しておきます。
修正方法としては、2通りあります。
①全ての内容を記載した修正後の適格請求書を改めて発行する
②誤りのある請求書との関連性を明らかにして、修正事項のみを明示した書類を発行する
①は完全に差し替えるイメージで、②は、修正事項を追記するという感じですね。
修正した適格請求書を発行した事業者は、修正前と修正後(①または②)の両方の適格請求書の写しを保存しておく必要があるので、気を付けましょう。
また、適格請求書に誤りがあった場合、買い手側で修正することは認められていないので、買い手側が気づいた場合には、売り手側へ修正した適格請求書の発行を依頼する必要があります。
売り手が発行した適格請求書の写し等の保存はいつまで必要?
適格請求書発行事業者は適格請求書等の写しを保存する義務があります。
写しの保存などに関して、まとめるとこんな感じです。
・相手方に交付した適格請求書の写しは、その課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間保存が必要です。
・適格請求書の写しは、適格請求書そのもののコピーだけでなく、適格請求書の記載事項が確認できるもの(レジのジャーナル、複数の適格請求書の記載事項にかかる一覧表など)も認められています。
・自社の業務システムで作成した適格請求書に係る電磁的記録を印刷して、紙で交付した場合に、当該電磁的記録を写しとして保存することも可能です。
・電磁的記録(電子インボイス)として、適格請求書を交付した場合に、提供した電磁的記録のまま保存することも可能です。
交付義務の免除あり
適格請求書発行事業者には、適格請求書などを発行する義務があります。
が、適格請求書を交付することが困難な取引として義務が免除されているものもあります。
例えば、鉄道やバスなどを利用した3万円未満の取引や、自動販売機やコインロッカーを利用した取引などは、適格請求書を簡単に入手できないため、交付義務が免除されいます。
詳細を知りたい方はこちらの記事を参考にどうぞ。
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まとめ
まとめます。
ポイント
・適格請求書発行事業者は、適格請求書、適格返還請求書、修正した適格請求書の交付及び写しの保存義務がある。
・適格請求書などは様式は法令などに定めはなく、必要な記載事項があれば手書きでもよく、名称にも決まりはない。
・適格請求書の修正方法は、修正した適格請求書を改めて発行するか、修正事項のみを明示した書類を発行する方法がある。
・適格請求書等は、その課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間保存が必要。
・一部適格請求書の交付が困難な取引には交付義務が免除されている。
今回でてきた、適格返還請求書や修正した適格請求書は、製造業などでよく出てくる事項かと思います。
事前に影響が出そうな所については、経理部や社内で勉強会などを実施するのがおすすめですよ。